新常識

「産後リカバリー期」とは

産後には「リカバリー期」があることをご存じでしょうか?
妊娠中の「マタニティー期」、出産直後の「産褥期」と比べ、聞き慣れない言葉かもしれません。
一般的には、出産後1~6ヶ月目までが産後ママの心身を回復するための重要な期間と言われています。しかし産後リカバリープロジェクトでは、その前後も含めた期間を「産後リカバリー期」とし、体と心を回復させるための重要な時期と考えます。
ここでは「リカバリー期」について詳しく説明していきます。

産後リカバリー期とは?

大きな身体や環境の変化がある産前産後は、準備期間の「マタニティー期」から始まり、出産直後の「産褥期」、そしてその先の、心身や家族との関係、社会への復帰するために必要な期間も含め、「リカバリー期」があります。
産後のママは心身ともにとても疲れやすく、十分な休息が必要ですが、見過ごされがちな現状があります。この時期に適切なケアとサポートを受けることで、心と体が回復していき、安心して育児と向き合うことができます。産後ケアの重要性を理解し適切なアクションを取ることが、ママ自身だけでなく家族全体の幸福につながるのです。産後リカバリープロジェクトでは、以下の期間を「産後リカバリー期」としています。

産前期:準備期間期(マタニティー期)

産後リカバリーへの準備は産前から始まっています。産前のマタニティー期に情報収集をしたり、準備を進めたりすることが産後の心身の回復へと繋がります。

産後0~2ヶ月:身体リカバリー期(産褥期)

大きくなった子宮が元に戻ろうとする痛みや、出産時の傷の痛みが続く人も多い時期です。さらに休む間もなく24時間体制の赤ちゃんのお世話が始まることで、慢性的な睡眠不足になりやすい時期でもあります。疲労は積み重なり、またホルモンバランスの急激な変化も相まって、体だけでなく精神的にも不安定になりがちです。

産後3~10ヶ月:心身リカバリー期

赤ちゃんは3~4ヶ月頃には起きている時間が増え、5~7ヶ月頃には寝返りやお座りをするようになります。一方お母さんは、身体が回復してきて、体調が整い始める時期ではありますが、ここまでがんばってきた疲れが出てきたり、赤ちゃんの体重増加による抱っこの負担で肩こりや腰痛に悩まされたりする人も多いです。

産後11ヶ月以降:家族リカバリー期

ママも日常のできることが増えていき、仕事復帰への準備をする中で、より活発になる赤ちゃんのお世話で体力は常にギリギリ。中には夜泣きによる睡眠不足がつらいという人もいます。また、夫婦の疲労も溜まるなど、子どもだけでなくお互いの体と心にも気を配り、周囲の協力も含めて育児の環境を整える時期です。

産休明け期:社会リカバリー期

産休が終わり仕事へ復帰する人も多く、また子どもの成長とともに行動範囲も広がり始め、少しずつ社会復帰をしていく時期です。まだ体力が回復しきっていない人も多い中、ママも赤ちゃんも慣れない新生活が始まり、新たな悩みが出てくる時期でもあります。まだ「産後リカバリー期」であるということを忘れず、無理せず過ごすことが必要です。

産後の身体の状態

産後リカバリー期間における身体の状態は個人差が大きいですが、以下のような目安があります。

身体の回復

産後1-2週間は身体の回復に集中する時期です。血崩れが止まるのに数週間かかることも。立ち上がり・歩行がしづらい時期が2-3週間程度あります。

子宮の回復

子宮は産後6-8週程度で元の大きさに戻ります。

骨盤底筋の回復

立位保持・歩行など骨盤底筋への負荷がかかる動作が1-2ヶ月は制限されます。産後3-6ヶ月で筋力が回復する人が多いです。

その他

疲労回復には個人差が大きいですが、少なくとも産後3-6ヶ月は体力的に厳しい時期。睡眠不足も大きな負担となります。心身ともに1年程度かけて産前の状態に戻るのが一般的です。

個人差があるにせよ、負担がかかっていて、通常とは違う状態であることは間違いありません。無理のないペースで身体の回復を待つことが大切です。

産後リカバリー期の課題

産後リカバリー期は、心身ともに大きな変化を経験する時期であり、さまざまな課題がでてきます。この時期の課題をきちんと知り、適切なサポートを受けながら過ごすことは、ママにとっても家族にとっても、とても重要なことです。
以下に、産後リカバリー期における主な課題を紹介します。

心身の回復

出産後は、身体の変化のみでなく、心にも大きな負担があります。ホルモンバランスの変化や睡眠不足などから、疲労感や倦怠感、イライラや不安などの症状が出ることがあります。適切な休息、栄養、そしてサポートが必要です。

育児への適応

新生児のお世話は想像以上に大変なものです。授乳やオムツ替え、沐浴など、24時間体制で対応する必要があります。夜間授乳や夜泣きなどもあり、睡眠不足になりやすく、ストレスが溜まりやすくなります。

パートナーシップの変化

子供が生まれることで、夫婦間の関係性も変化します。大人二人だけの生活とは全く異なる生活リズムでの日常が始まります。共同で子育ての役割を分担すること、また、夫婦としての関係を保ちながら新しい家族構成に慣れていくことが求められます。

社会的孤立感

産後は気軽に外出しにくくなることもあり、社会的なつながりが薄れがちです。友人や家族からのサポートが限られている場合、孤立感を感じることがあります。

職場復帰のプレッシャー

職場復帰を考える際には、仕事と育児のバランスをどのように取るかが大きな課題となります。また、職場環境や上司、同僚からの理解やサポートも重要です。

産後うつ

産後うつ病は産後リカバリー期における重要な課題です。ホルモンバランスの変化、睡眠不足、育児へのプレッシャーなどが原因で発症することがあります。

まとめ

産後リカバリー期は、産前から始まり産後へと続く、大切な時期です。特に、見た目的にも通常のように見える産後は、まだまだ悩みが多い時期でもあるにもかかわらず、問題が見過ごされがちです。産後リカバリー期の問題解決には、いろいろな面からのアプローチが必要です。適切な知識とサポートがあれば、ママ自身だけでなく家族みんなのQOL(生活の質)を高めることができます。
一般社団法人日本リカバリー協会では、産後ママが健康的に回復し、QOLを高めることを目的とした「産後リカバリープロジェクト」を展開しています。産後リカバリープロジェクトは、出産後のママの心と体の回復をサポートする取り組みです。このプロジェクトは、「産後」を一つのターニングポイントとして捉え、産後の女性が直面する様々な課題や健康問題に対して、正しいヘルスケア知識の普及、サポートの提供を目指しています。

次章では産後リカバリー期の注意すべきポイントや心構えを紹介します。