産後リカバリープロジェクト事務局
× タカラベルモント株式会社 和田海琴さん
2025年、産後女性の心身の回復を支援する「産後リカバリープロジェクト」が、産前産後女性を取り巻く「10の重要課題」を発表しました。今回は、プロジェクト事務局がタカラベルモント株式会社の和田海琴さんにお話を伺い、課題の背景や解決に向けた取り組みについて深掘りします。

2025年、産後女性の心身の回復を支援する「産後リカバリープロジェクト」が、産前産後女性を取り巻く「10の重要課題」を発表しました。今回は、プロジェクト事務局がタカラベルモント株式会社の和田海琴さんにお話を伺い、課題の背景や解決に向けた取り組みについて深掘りします。

―和田さん、本日はよろしくお願いいたします。今年の「産前産後の10の重要課題」について、具体的に教えていただけますか?
和田さん:よろしくお願いいたします。産後リカバリープロジェクトでは、毎年、産後女性を取り巻く課題を調査し、10項目にまとめています。今年は「休養」に特に注目し、産前産後の女性が直面する現状を浮き彫りにしました。休養は母親の心身の回復を支えるだけでなく、家族全体が健やかに暮らすための社会的基盤だと私たちは考えています。では、1つずつお話ししていきますね。
―ありがとうございます。では、まず1つ目の課題からお願いします。
和田さん:1つ目は、「元気な産後ママが減っている」です。調査では、「元気」と答えた産後女性が前年より18%減少していることが分かりました。背景には、物価上昇や家計負担の増加、出社回帰といった社会的要因が挙げられます。また、睡眠時間が5時間未満の方が22%増加しており、一般女性の約2倍に達している点も深刻です。 自由回答では、「睡眠不足で心身の回復が難しい」「夫婦だけでの育児に孤独を感じる」といった声が多く寄せられました。

―睡眠不足や孤独感が、産後女性の健康に大きな影響を与えているのですね。次に、2つ目の課題について教えてください。
和田さん:2つ目は、「産後は疲れと同様に痛みとの闘い」です。体の痛みを抱える産後女性は一般女性の約1.48倍に上ります。帝王切開や会陰切開の傷、授乳や抱っこによる肩こり・腰痛など、体のあちこちに痛みを感じている方が多いのです。「お腹も腰も授乳も全部痛くて、トイレに行くのも辛かった」という声もあり、疲労に加えた痛みが心身の回復をさらに難しくしている現状が浮き彫りになりました。
―痛みが回復を妨げているというのは、見過ごせない問題ですね。では、3つ目の課題についてもお聞かせください。
和田さん:3つ目は、「自身のアイデンティティの揺らぎ、自己評価の低下」です。調査では、産後女性の72.4%が高いストレスを感じていることが分かりました。社会との接点を失い、母親という新しい役割に適応する難しさが原因と考えられます。「子どもの成長は嬉しいけれど、孤独感や社会から取り残された気持ちになる」といった声が多く、自己評価の低下や孤立感が深刻化していることが分かります。
―孤立感や自己評価の低下は、精神的な負担が大きそうですね。4つ目の課題についてはいかがでしょうか?
和田さん:4つ目は、「時間が自由に使えないストレス」です。自由時間が1時間未満という女性が、産後では68.5%に達しています。家事や育児に追われ、自分自身のための時間が取れないという声が多く寄せられました。「自分のことを構う時間がほとんど取れない」という声が象徴的で、心身を休ませる時間が極端に少ない現状が浮き彫りになっています。

―自由時間の不足は、休養の妨げになりますね。続いて、5つ目の課題について教えてください。
和田さん:5つ目は、「サポート体制に行き着かない」です。産後女性の約7割が、家庭や職場での協力体制に不満を感じています。特に地域格差や夜間・休日の支援不足が大きな問題です。「産前は助産師や周囲のサポートが手厚かったけれど、産後は急に孤独になった」という声があり、最も支援が必要な時期にサポートが届いていない現状が浮かび上がっています。
―サポートが必要な時期に届かないのは、深刻な課題ですね。では、6つ目の課題についてお願いします。
和田さん:6つ目は、「運動習慣の減少による筋力低下」です。調査では、産後女性の63%が「全く運動しなかった」と回答しており、筋力低下を感じる割合は一般女性の1.22倍に上ります。 「体力が落ちて常に体調が悪かった」という声もあり、運動不足が体力の回復を遅らせる悪循環を生んでいることが分かりました。
―運動不足が体力低下を招く悪循環は避けたいですね。7つ目の課題についても教えてください。
和田さん:7つ目は、「休養の7タイプ(娯楽・休息・転換)の不足」です。特に娯楽時間が一般女性の0.77倍と顕著に少なく、「休むことへの罪悪感」を感じる割合は一般女性の1.52倍に上っています。 「母だから頑張らなきゃ」という無意識のプレッシャーが、休養を妨げている要因です。

―休養を取ること自体が難しい環境が影響しているのですね。8つ目の課題についてはいかがでしょうか?
和田さん:8つ目は、「産後のリカバリー行動が進化中」です。AI家電やリカバリーウェアなど、テクノロジーを活用した回復行動が一般女性の1.4倍に増加しています。「ワンオペ育児が辛い。ロボットでもいいから助けに来てほしい」という声が、テクノロジーへの期待を示しています。
―テクノロジーが産後女性の負担軽減に役立っているのですね。9つ目の課題についてもお願いします。
和田さん:9つ目は、「脳を休ませる時間がない」です。「頭がすっきりしない」と答えた産後女性は一般女性の2.96倍に上り、不安をスマホで調べ続けてしまう傾向が見られました。 「不安を調べすぎて楽しいという感情がほとんどなかった」という声もあり、心の休養が必要だと感じます。
―心の休養をどう確保するかが重要ですね。最後に、10個目の課題を教えてください。
和田さん:10個目は、「産後の体型・体質の変化に惑わされがち」です。体重や体型に悩む産後女性は49%に達し、一般女性より15ポイント高い結果となりました。「体重は落ちても体型は戻らない」という声が、自己肯定感の低下につながっています。

―和田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。これらの課題を解決するために、プロジェクトとしてどのような取り組みを進めていきますか?
和田さん:私たちは、休養を「贅沢」ではなく「社会の基盤」として捉えています。自治体や企業との連携を通じて、産後女性が安心して休める環境を整備し、選択肢を広げていきたいと考えています。また、啓発活動を通じて、社会全体の意識改革を進めていきます。
―今後のプロジェクトの活動に期待しています。本日はありがとうございました!
この対談を通じて、産前産後女性が直面する課題が明らかになりました。産後女性が安心して休養を取れる社会の実現に向けて、プロジェクトのさらなる活動が期待されます。